陰日向に咲く






近、なかなか面白い本に出会うことがなかった僕ですが、久しぶりにレビューを書きたくなるような本を読みました。「陰日向に咲く(劇団ひとり著 幻冬舎刊)」です。
陰日向に咲く

の作品は2006年に発刊されたお笑いタレントの劇団ひとりさんの処女作で、これまで累計60万部以上売れたベストセラー小説です。僕はタレント本(劇団ひとりさんには失礼ですが・・・)にはまったく興味がありませんが、妻が知人から借りてきて家にあったので暇つぶしに読んでみました。

めはバカにしつつ読み始めましたが、次第に劇団ひとりさんが紡ぎだす世界の中にどんどん引き込まれていきました。小説は5タイトルがオムニバス形式で書かれていますが、実は一見関係がないと思われる各タイトルの登場人物が微妙に絡み合いながら物語が展開されます。そしてストーリーが緩く連携しながら読者に一気に読ませ、本書のクライマックス「Overrun」で泣かせ、ラストの「鳴き砂を歩く犬」で全てのタイトルが一本の線になります。この「微妙な絡み」がこの小説の読みどころになりますが、この手法が斬新で面白く著者が考えついたものならば、そこには処女小説とは思えないような才能が感じられました。

トーリーがテンポ良く流れ、文体もわかりやすいため一気に全220ページを読みきりましたが、読後感は決して良いものではありませんでした。「面白い!」中に何か引っ掛かるものがあり「この心苦しい感じは何だろう?」と考え始めて数日後、もう一度読み直してみました。すると各タイトルに出てくる登場人物の悲哀が自分に重なる部分があることに気づき、それが妙なリアリティーを持って何か物悲しい気分にさせられてしまったのでしょう。

の作品の特筆すべき点は、一見泣かせるようなストーリー展開の中に(大部分の人はこの部分で面白いと感じ、癒されたのでは?)実は当時の世相をタイムリーに反映するキーワードが幾つも散りばめられている事です。キーワードは格差社会、現代人の孤独感や虚無感、オレオレ詐欺、老人の孤独死・・・。こういった現代日本の暗部が軽快なテンポの文体と思わず吹き出してしまうような登場人物のセリフと笑いのエッセンスに包み込まれているために読者には深刻に感じられませんが、行間には著者なりの現代社会への警鐘が秘められているように感じたのは僕だけでしょうか?劇団ひとりさんと言えば、複数のキャラクターを演じ分けたひとり芝居を笑いにするという芸人さんですが、作品の中の登場人物が発する一つひとつの言葉が妙なリアリティーを持って読者に迫ってくるように感じるのは、彼の芸風がなせる業といっても過言ではないでしょう。

だ、この作品を読んだことのない方には結構お勧めかもしれません。お笑いタレントとしての有名性や話題性でこの本が売れたわけではないことがきっと分かると思います。「小説家」劇団ひとりさんの次回作は要チェックですネ!

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コメント

内容を全く知らなかったので、自伝だとばかり思ってました。
結構重い内容なんですね。ビックリ。
読み口が面白そうなので興味が湧きました。

しかし最近は芸人さんでも他に才能を発揮する人が沢山いますね。
どこまで信じていいのかわからない部分もありますが、これでは本業の人が商売あがったりかも・・・^^;
えり好みせず色んなジャンルで探さないと、うっかり面白い作品を見逃してしまいそうですね。

でごいちママさんへ

「重い内容を軽いタッチで読者に読ませる」というコンセプトがこの作品が売れた理由かもしれませんね。

実際に僕も読みながら結構、笑ったりしてましたし・・・。どのタイトルも最後は救われるような展開になっているところも万人ウケするところでしょう。

機会があったら読んでみてください!!
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