『A QUICK ONE』 THE WHO

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ビュー作『マイ・ジェネレイション』でイギリスのロック・シーン、とりわけモッズから圧倒的な支持を集めたザ・フーはセカンド・アルバムとなる『ア・クイック・ワン』を1966年にリリースした。大物プロデューサーであるシェル・タルミーと別れ、新たなプロデューサーのキット・ランバートを迎えた本作は、デビュー作であれだけ黒っぽかったR&B香りが随分と薄まりポップでダンサンブルな方向へ向かった。


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作ではアルバムに収録された12曲中8曲をピート・タウンゼントが作詞・作曲し、残りはカバー曲とメンバーとの共作という構成だったが、本作ではベースのジョン・エントウィッスルとドラムのキース・ムーンが2曲、ヴォーカルのロジャー・ダルトリーが1曲を提供し(タウンゼントは10曲中4曲)、ザ・フーのオリジナル・アルバムではメンバー全員が曲を提供するのは本作が唯一のものとなっている。

1曲目【ラン・ラン・ラン】(楽曲 タウンゼント)から「おっ?」と拍子抜けするほどのポップでダンサンブルなナンバーである。3曲目の【アイ・ニード・ユー】はムーンの楽曲であり、リード・ヴォーカルも彼である。曲のタイトル通り繊細な恋の歌だが、その曲を効果的に盛り上げているのはチェンバロで、ザ・フーの楽曲としては珍しい楽器が導入されているがこの奏者はエントウィッスルである。

の曲と言えば5曲目はカバーで【恋はヒート・ウェーヴ】が収録されている。今やこの曲はモッズ系バンドの十八番でザ・ジャムもカバーしていたが、ポール・ウェラーよりダルトリーのヴォーカルのほうがポップで耳障り良い。やはりギター・サウンドはリッケンバッカー以外あり得ないだろう。

4曲目の【ウイスキー・マン】はベース・ラインが印象的だ。それもそのはずで楽曲はベースをギターのように奏でるエントウィッスル作である。この曲ではヴォーカルも担当しているためプレイは控えめだが導入されているホルンもエントウィッスルの演奏で、3曲目に聴かせたチェンバロと共にマルチ・プレイヤーぶりを如何なく発揮している。また、このアルバムでも一際異彩を放っている2曲目の【ポリスとくも野郎】も彼の楽曲で曲作りの面でも才能を発揮しているのも聴きどころだ。

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8曲目【恋のマイ・ウェイ】はこれといった特色は無いがダルトリー作の楽曲である。このアルバムではマネジメント側との契約でメンバー全員の楽曲提供が義務づけられていた為に「やっつけ感」がある。唯一の救いは装飾的なホルンを聴かせるエントウィッスルのプレイか。

うして聴いていくとタウンゼントの印象が少なく感じるがアルバム全体のコンセプトは彼の手の中にある。ポップであれ何であれ、全体を貫くモッズ(が好む)的なサウンドはオープニングの【ラン~】から【ドント・ルック・アウェイ】【ソー・サッド・アバウト・アス】を経て、最終曲の【クイック・ワン】という9分を超えるオペラ風の大作で幕を閉じる。そしてこの曲は後に発表されるロック・オペラの金字塔と言われるアルバム『トミー』への大いなる助走となった。

のアルバムの制作過程で前作のプロデューサーであるシェル・タルミーと楽曲の版権を巡り訴訟が勃発、不仲と言われたメンバー同士の衝突を乗り越えて出来た本作は産みの苦しみを味わった分、世界的な名声を得るための大いなるラボ(実験室)となった作品であった。


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